給料と法定福利費の仕訳をまるごと解説【源泉所得税・社会保険料の流れ】
給料の仕訳を「支払い→納付→決算整理」の3段階で解説。源泉所得税・社会保険料の天引きと預り金の処理、法定福利費(会社負担分)の仕訳、練習問題3問と間違えやすいポイント4点を収録。
この記事でわかること
- 給料の支払い時に源泉所得税を控除する仕訳
- 社会保険料(健康保険・厚生年金)の従業員負担分と会社負担分の処理
- 法定福利費の意味と仕訳のタイミング
- 預り金・未払費用を使った一連の処理の流れ
給料の仕訳が複雑に見える理由
給料の仕訳は、「給料を支払う」だけではなく、次の2つが絡んでいるため複雑に見えます。
- 源泉所得税の天引き:会社が従業員の代わりに国に納める税金
- 社会保険料の天引き:健康保険・厚生年金の従業員負担分
これらは「従業員から一時的に預かるもの」として「預り金(負債)」で処理します。
また、社会保険料には会社が独自に負担する「会社負担分」もあり、これが「法定福利費(費用)」として処理されます。
まず全体を3段階で押さえると整理しやすくなります。
① 給料を支払う
→ 給料は総支給額で計上する
→ 控除した分は預り金にする
② 控除したものを後で納付する
→ 預り金を取り崩す
③ 会社負担分の社会保険料を処理する
→ 法定福利費として計上する
全体の関係を先に押さえる
給料の仕訳では、次の関係を最初に理解しておくとミスが減りやすくなります。
総支給額 = 手取り額 + 控除額
仕訳では、給料は総支給額で借方に計上し、控除した分は預り金として貸方に計上します。
登場する勘定科目の整理
| 勘定科目 | グループ | 意味 |
|---|---|---|
| 給料 | 費用 | 従業員への報酬(総支給額) |
| 預り金 | 負債 | 源泉所得税・社会保険料(従業員負担分)の一時預かり |
| 法定福利費 | 費用 | 社会保険料の会社負担分 |
| 未払費用 | 負債 | 当期発生したが未払いの費用 |
| 未払法定福利費 | 負債 | 当期発生したが未払いの法定福利費 |
補足:試験によっては「社会保険料預り金」「所得税預り金」のように詳細な科目名が使われることがあります。問題文の科目指定に従いましょう。
給料支払い時の仕訳
基本形:源泉所得税のみ控除
給料¥300,000のうち、源泉所得税¥30,000を差し引いて残額を現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 300,000 | 現金 | 270,000 |
| 預り金 | 30,000 |
解説:給料の総支給額(¥300,000)が借方。手取り額(¥270,000)を現金で支払い、差額の源泉所得税(¥30,000)は預り金として貸方に計上します。
応用形:源泉所得税と社会保険料(従業員負担分)を控除
給料¥300,000のうち、源泉所得税¥20,000・社会保険料(従業員負担分)¥30,000を差し引いて残額を普通預金から振り込んだ。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 300,000 | 普通預金 | 250,000 |
| 預り金 | 50,000 |
計算:手取り額=¥300,000 − ¥20,000 − ¥30,000=¥250,000 预り金=¥20,000 + ¥30,000=¥50,000
コツ:控除項目が複数あっても「預り金」でまとめて計上するのが基本です(問題の指示によって分けることもあります)。
法定福利費(会社負担分の社会保険料)の仕訳
社会保険料(健康保険・厚生年金など)は、従業員と会社がそれぞれ一定割合を負担します。
- 従業員負担分:給料から天引き→預り金
- 会社負担分:会社が独自に負担→法定福利費(費用)
従業員から預かったもの → 預り金
会社が自分で負担するもの → 法定福利費
「誰が負担するか」でどちらの科目を使うかが決まります。これがこの論点の最重要ポイントです。
社会保険料を納付するときの仕訳
社会保険料(従業員負担¥30,000・会社負担¥30,000、合計¥60,000)を現金で納付した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 30,000 | 現金 | 60,000 |
| 法定福利費 | 30,000 |
解説:給料支払い時に預かっておいた従業員負担分(¥30,000)と、会社が負担する分(¥30,000)をあわせて納付します。
源泉所得税を納付するときの仕訳
給料から天引きした源泉所得税¥20,000を税務署に現金で納付した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
コツ:源泉所得税の納付は、一時的に預かっていた「預り金」を取り崩すだけです。費用は発生しません(すでに給料計上時に費用は計上済み)。
一連の処理の流れ
給料の処理は、支払い時・納付時の2段階に分かれます。
【給料支払い時】
給料(総支給額) ← 借方(費用)
└─ 現金(手取り額)← 貸方
└─ 預り金(控除額:源泉所得税+社会保険料従業員分)← 貸方
【社会保険料納付時】
預り金(従業員負担分)← 借方(負債の取り崩し)
法定福利費(会社負担分)← 借方(費用)
└─ 現金(合計納付額)← 貸方
【源泉所得税納付時】
預り金(源泉所得税)← 借方(負債の取り崩し)
└─ 現金 ← 貸方
未払計上が必要な場合(決算整理)
給料・法定福利費が当期に発生しているが、決算日時点でまだ支払われていない場合は、未払計上が必要です。
未払給料の計上
当月分給料¥300,000が翌月払いのため、決算日に未払計上する。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 300,000 | 未払費用 | 300,000 |
未払法定福利費の計上
当月分の会社負担社会保険料¥30,000が翌月納付のため、決算日に未払計上する。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法定福利費 | 30,000 | 未払費用 | 30,000 |
補足:「未払法定福利費」という科目を使う場合もあります。問題の指示に従いましょう。
練習問題で確認する
次の取引について仕訳を示しなさい。
(1)給料¥400,000のうち、源泉所得税¥40,000・社会保険料(従業員負担分)¥35,000を控除し、残額を普通預金から振り込んだ。 (2)社会保険料(従業員負担分¥35,000・会社負担分¥35,000)を現金で納付した。 (3)源泉所得税¥40,000を現金で税務署に納付した。
解答・解説を見る
(1)給料の支払い
手取り額 = ¥400,000 − ¥40,000 − ¥35,000 = ¥325,000
預り金 = ¥40,000 + ¥35,000 = ¥75,000
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 400,000 | 普通預金 | 325,000 |
| 預り金 | 75,000 |
借方合計(¥400,000)=貸方合計(¥325,000 + ¥75,000)を確認。
(2)社会保険料の納付
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 35,000 | 現金 | 70,000 |
| 法定福利費 | 35,000 |
従業員負担分(預り金)と会社負担分(法定福利費)をあわせて納付する。
(3)源泉所得税の納付
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 40,000 | 現金 | 40,000 |
給料支払い時に預かった分を取り崩すだけ。新たな費用は発生しない。
間違えやすいポイント
ポイント1:給料の借方金額を手取り額にしてしまう
給料の借方には「総支給額」を計上します。控除後の手取り額を借方に書くミスが多いです。
総支給額=手取り額+控除額(源泉所得税+社会保険料等)、という計算式を意識しましょう。
ポイント2:法定福利費と預り金を混同する
- 従業員負担分の社会保険料→預り金(給料支払い時に天引き)
- 会社負担分の社会保険料→法定福利費(会社が独自に負担)
「従業員から預かったか、会社が払うか」で科目が変わります。
ポイント3:源泉所得税の納付を費用として計上する
源泉所得税の納付は、すでに給料計上時に費用が計上されています。納付時は単に「預り金を取り崩すだけ」であり、新たな費用は発生しません。
ポイント4:社会保険料の納付額を従業員負担分だけにしてしまう
社会保険料の納付は「従業員負担分+会社負担分」の合計額です。従業員負担分だけで仕訳すると、法定福利費が漏れます。
よくある質問
Q. 預り金は何に使う科目ですか?
従業員から一時的に預かるものに使います。源泉所得税・社会保険料(従業員負担分)のほか、財形貯蓄や組合費など、後で第三者に払い込む予定のものが対象です。預り金は後から必ず支払う義務があるため、負債に分類されます。
Q. 法定福利費は損益計算書のどこに入りますか?
費用グループの科目のため、損益計算書の費用の部に計上されます。販売費及び一般管理費に含まれることが多いです。
Q. 社会保険料の従業員負担分と会社負担分の比率は決まっていますか?
健康保険・厚生年金は原則として折半(半分ずつ)ですが、試験問題では「従業員負担分¥○○・会社負担分¥○○」と金額が指定されているため、指定された金額で処理します。
まとめ
給料と法定福利費の仕訳で押さえるべきポイントを整理します。
- 給料の借方は総支給額:手取り額ではなく総支給額を借方に計上し、控除額は貸方の「預り金」に計上する
- 社会保険料は従業員と会社で分けて処理する:従業員負担分→預り金 / 会社負担分→法定福利費
- 預り金の取り崩しタイミングを押さえる:源泉所得税は税務署への納付時、社会保険料は年金事務所への納付時に取り崩す
「給料支払い時」と「各種納付時」の2段階に分けて処理の流れを整理すると、この論点はかなり理解しやすくなります。
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