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貸倒れと貸倒引当金の仕訳|当期発生分と前期以前分の覚え方

学習法

貸倒れと貸倒引当金の仕訳を「当期発生分」と「前期以前発生分」に分けて解説。引当金残高がある場合・ない場合の3ケースを判定フローで整理。償却債権取立益や練習問題も収録。

この記事でわかること

  • 貸倒れの仕訳が「当期発生分」と「前期以前発生分」で異なる理由
  • それぞれの仕訳パターンと計算手順
  • 貸倒引当金残高がある場合・ない場合の処理の違い
  • 間違えやすいポイントと防止策

貸倒れとは

貸倒れとは、売掛金・受取手形などの債権が回収不能になることです。

得意先が倒産するなどして、代金を受け取れなくなった場合に貸倒れの処理を行います。

貸倒れが発生したときの仕訳は、次の2つの条件によって変わります。

① その債権は当期に発生したものか、前期以前に発生したものか
② 貸倒引当金残高が残っているか

この2点を確認してから仕訳を書くことが、貸倒れの処理を正確に行うカギです。


当期発生分の債権が貸し倒れた場合

考え方

当期に発生した売掛金が貸し倒れた場合は、貸倒引当金の残高があっても使わず、全額を「貸倒損失(費用)」で処理します。

なぜかというと、貸倒引当金は前期末に設定した引当金であり、当期に新たに発生した債権に対する引当金はまだ設定されていないためです。

仕訳

当期に発生した売掛金¥30,000が貸し倒れた。

借方金額貸方金額
貸倒損失30,000売掛金30,000

コツ:当期発生分→問答無用で全額「貸倒損失」。引当金残高があっても使わない。


前期以前発生分の債権が貸し倒れた場合

考え方

前期以前に発生した売掛金が貸し倒れた場合は、まず貸倒引当金を使い、不足分だけを貸倒損失で処理します。

貸倒引当金は「将来の貸倒れに備えてあらかじめ積み立てた費用の見積もり」であり、前期末に設定した引当金はまさにこの事態に対応するものです。

3つのケース

前期以前発生分の債権が貸し倒れた場合、貸倒引当金残高との関係で3つのパターンがあります。


ケース1:貸倒額が引当金残高の範囲内

前期以前に発生した売掛金¥20,000が貸し倒れた。貸倒引当金残高¥25,000。

引当金残高(¥25,000)≧ 貸倒額(¥20,000)
→ 引当金だけで処理できる
借方金額貸方金額
貸倒引当金20,000売掛金20,000

コツ:引当金が足りている→貸倒引当金のみ。貸倒損失は出てこない。


ケース2:貸倒額が引当金残高を超える

前期以前に発生した売掛金¥30,000が貸し倒れた。貸倒引当金残高¥20,000。

引当金残高(¥20,000)< 貸倒額(¥30,000)
→ まず引当金を全額使い、不足分(¥10,000)を貸倒損失
借方金額貸方金額
貸倒引当金20,000売掛金30,000
貸倒損失10,000

コツ:引当金を先に全額使い、足りない分だけ貸倒損失を追加する。全額を貸倒損失にするミスが最も多いパターン。


ケース3:貸倒引当金残高がゼロ

前期以前に発生した売掛金¥15,000が貸し倒れた。貸倒引当金残高はゼロ。

引当金残高(¥0)
→ 全額を貸倒損失で処理
借方金額貸方金額
貸倒損失15,000売掛金15,000

当期発生分と前期以前発生分の比較

当期発生分前期以前発生分
引当金の使用使わない引当金残高がある限り先に使う
処理科目貸倒損失のみ貸倒引当金→不足分は貸倒損失
理由当期発生分に引当金は設定されていない前期末に設定した引当金がある

判定フロー

問題文を読んで処理を判断するための流れです。

貸し倒れが発生した
    ↓
その債権は当期に発生したか?
    ↓
    Yes(当期発生)
    → 全額を貸倒損失で処理

    No(前期以前発生)
    → 貸倒引当金残高はあるか?
        ↓
        ある → 引当金を先に充当
              → 引当金で足りるか?
                    足りる → 貸倒引当金のみ
                    足りない → 貸倒引当金+貸倒損失
        ない → 全額を貸倒損失で処理

受取手形が貸し倒れた場合

売掛金だけでなく、受取手形が貸し倒れることもあります。処理の考え方は売掛金の場合と同じです。

前期以前に受け取った手形¥40,000が不渡りとなった。貸倒引当金残高¥50,000。

借方金額貸方金額
貸倒引当金40,000受取手形40,000

コツ:売掛金の貸倒れと同じ処理。対象の資産科目が変わるだけ。


貸倒れ後に回収できた場合(償却債権取立益)

一度貸し倒れとして処理した債権を、後から回収できることがあります。この場合は「償却債権取立益(収益)」を使います。

前期に貸倒れ処理した売掛金¥20,000の一部¥8,000を現金で回収した。

借方金額貸方金額
現金8,000償却債権取立益8,000

コツ:回収できた→予想外の収益→償却債権取立益(収益)が貸方。


3パターンの仕訳まとめ

状況借方貸方
当期発生分の貸倒れ貸倒損失売掛金・受取手形
前期以前・引当金範囲内貸倒引当金売掛金・受取手形
前期以前・引当金超過貸倒引当金+貸倒損失売掛金・受取手形
貸倒れ後の回収現金償却債権取立益

練習問題

次の各取引について仕訳を示しなさい。

(1)当期に発生した売掛金¥50,000が回収不能となった。貸倒引当金残高¥30,000。 (2)前期に発生した売掛金¥40,000が回収不能となった。貸倒引当金残高¥30,000。 (3)前期に発生した受取手形¥25,000が不渡りとなった。貸倒引当金残高はゼロ。 (4)2年前に貸倒れ処理した売掛金¥20,000のうち¥12,000が回収された。

解答・解説を見る

(1)当期発生分の貸倒れ

借方金額貸方金額
貸倒損失50,000売掛金50,000

当期発生分のため、引当金残高にかかわらず全額を貸倒損失で処理する。引当金残高¥30,000は使わない。

(2)前期以前発生分・引当金超過

引当金残高(¥30,000)< 貸倒額(¥40,000)
不足分 = ¥40,000 − ¥30,000 = ¥10,000
借方金額貸方金額
貸倒引当金30,000売掛金40,000
貸倒損失10,000

引当金を全額使い、不足分¥10,000だけ貸倒損失を計上する。

(3)前期以前発生分・引当金なし

借方金額貸方金額
貸倒損失25,000受取手形25,000

引当金残高がゼロのため、全額を貸倒損失で処理する。

(4)貸倒れ後の回収

借方金額貸方金額
現金12,000償却債権取立益12,000

一度貸し倒れ処理した債権の回収は、売掛金の戻しではなく償却債権取立益(収益)として処理する。


間違えやすいポイント

ポイント1:当期発生分に貸倒引当金を使ってしまう

当期に発生した債権が貸し倒れたとき、引当金残高があるからという理由で貸倒引当金を使うミスです。

当期発生分は引当金の対象外のため、全額を貸倒損失で処理します。問題文で「当期に発生した売掛金」という記述に注目しましょう。

ポイント2:前期以前発生分で全額を貸倒損失にしてしまう

前期以前の債権が貸し倒れたとき、引当金残高を確認せずに全額を貸倒損失にしてしまうミスです。

貸倒引当金残高が少しでもあれば、まず引当金から充当します。

ポイント3:引当金を使う順序を間違える

引当金残高を超える貸倒れが発生したとき、「引当金と貸倒損失を按分する」ような処理をするミスです。

正しい順序は「①引当金を全額使う→②不足分を貸倒損失にする」です。按分ではなく、引当金を先に全額充当します。

ポイント4:償却債権取立益を売掛金の戻しにしてしまう

貸倒れ後に回収できたとき、「売掛金を復活させてから回収する」という二段階の処理をするミスです。

簿記3級では、回収できた金額を直接「償却債権取立益」として計上します。


まとめ

貸倒れの仕訳で押さえるべき3点を整理します。

  1. 当期発生分か前期以前分かを先に確認する:当期発生分は全額「貸倒損失」、前期以前発生分は引当金を先に使う
  2. 前期以前発生分は引当金を先に全額充当する:引当金残高が足りない分だけ「貸倒損失」を追加する
  3. 回収できたら「償却債権取立益」:一度貸し倒れとして処理した債権の回収は収益として計上する

問題文で「当期に発生した」か「前期以前に発生した」かという記述を見逃さないことが、この論点の最大のポイントです。


この記事はトッパス(topath.jp)が提供する簿記3級学習情報です。トッパスでは、CBT形式に対応した問題演習と学習ダッシュボードで、あなたの合格をサポートします。

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